ハウスメーカーでの注文住宅

高気密・高断熱の家 みんなが知らない落とし穴

  • 最近流行の、高気密高断熱住宅で建てたい!
  • C値UA値だけ見比べれば大丈夫?
  • 高気密高断熱の家で、気を付けるポイントを教えて!

ここ数年で特に耳にすることが多くなった「高気密・高断熱住宅」

せっかく建てるなら、快適で光熱費もかからない家にしたいですよね。気密・断熱の分野は、性能が数字で表記できる分野ですので割と比較しやすいと思います。

ですが、

だからこそ知っておかなくてはならない、高気密・高断熱住宅の大きな落とし穴があります。ここではわかりやすくそれを解説していきますので、是非参考にしていただき、後悔ない住まいづくりをして下さいね。

高気密・高断熱の家 評価するための数値

まずは気密・断熱について基本中の基本を押さえましょう。

住宅の気密性・断熱性を評価するための数値として、「C値」「Q値」「UA値」というものがあります。とっても簡単に説明しますね。

C値(隙間相当面積)

気密性を表す数字で、家の隙間を計算した数値です。値が小さければ小さいほど、隙間が少ないので高気密の家ということになります。

Q値(熱損失係数)・UA値(外皮平均熱貫流率)

断熱性を表す数字で、家の中からどれくらい熱が逃げるかを計算した数値です。値が小さければ小さいほど、熱が逃げないので高断熱の家ということになります。それぞれ計算式が少し違いますが、今の国の基準では「UA値」が採用されています。

高気密・高断熱の家 過剰な数字合戦

気密性・断熱性というのは、日常生活に直結し、かつ数字で評価することができる住宅性能のため、各住宅メーカーでの数字合戦が繰り広げられています。

「うちはUA値○○を達成しています!」

「C値の小ささで家の性能は比べましょう!」

なんとなく聞いたことがあるでしょう?ネット上でも「断熱性能ランキング!」って感じで数字が良い順番でまとめている記事がたくさんあります。

もちろん、C値やUA値が優れていること自体はとても良いことです。性能の良さの、一つの証明ですからね。これに異論はありません。

ただ、昨今の数字合戦はあまりにも過剰で、「わずかでも値が優れていればその家の方が良い家!」みたいな風潮はいかがなものかと思います。

C値やUA値はとても大切な目安のひとつではありますが、これに全てをかけるにはたくさんの落とし穴があるんです。これは、結構みんなが知らないことが多いので、注意してくださいね。

高気密・高断熱の家の落とし穴 C値

まずは、C値についてのみんなが知らない落とし穴です。

国の省エネ評価基準にC値の項目はない!

省エネに関する国の基準は、H25省エネ基準やZEHなどいつくかありますが、実は国が定めた省エネの基準には、なんとC値の項目はそもそもありません!

正確には、元々は評価項目にC値もあったのですが、平成21年の改正省エネ法で高気密の目標値であったC値基準が削除されています。国が「この数値は省エネを評価するには適切でない」と判断したんですね。

元々C値が評価項目にあった理由としては

「家の断熱性能を高めるため」「断熱材の性能をちゃんと引き出すため」「結露しないようにするため」「換気能力を高めるため」

ということのためだったのですが、

「C値じゃ評価のしようがないよね」「評価はC値じゃなくて他の基準項目でちゃんと評価しよう」

っていう二つの理由で削除されています。もちろん、C値が優れていること自体は良いことですし、数値が悪いことは住まいにとっても良くないのですが、C値がわずかでも優れていればこれを根拠により良い家だ!というのはいかがなものかと思います。

事実、国の省エネ基準改正の際には

「相当隙間面積の多少で性能を競う傾向も見られるが、重要なのは具体的な対策を確実に講じることであり、それを講じたとしても住宅規模・形態・構造種別により一律に比較することは難しい。相当隙間面積のみで評価される現実は決して正しい方向とは言えない」

との見解があります。

C値を頑張ってどれくらい意味があるか

C値はどれくらいあればいいかという議論はたくさんあるんですが、気密性の分野が得意な住宅会社ではC値「1」は最低、できれば「0.7」あったらいいなんて言われる事が多いようです。

でも、そもそも「うちはC値が0.5です!」っていわれても、それがどれくらいすごくて意味があるか、良くわかりませんよね。

例えば、延べ床面積40坪(132㎡)のとある住宅のC値(隙間相当面積)が「1」だとしましょう。これは、床面積1㎡につき1㎠の隙間があるということになりますので、132㎡の家には、釘の穴とかサッシの隙間とか部材の継ぎ目とかで132㎠の隙間があるということになります。

この132㎠って、ハガキ1枚分です。40坪の家、全ての隙間をかき集めて、ハガキ1枚の隙間があるのがC値「1」の家。

で、C値「0.5」の家はこれの半分ですから、40坪の家にハガキ半分の隙間。

これどう思います?C値「1」と「0.5」では性能が倍違うという認識になりますが、実際には40坪の家の全ての隙間をかき集めた場合で「ハガキ1枚分」と「ハガキ半分」だけの違いです。

まあ、厳密にいえばハガキ半分の方がいいんでしょうけど、これのために住宅会社選びますか?

そもそも、C値を測定する場合には換気口や排水口などの家についている穴は全て塞ぎます。でも、実際の家には換気口などのたくさんの穴が開いていますよね。

季節によっては窓を開けることの方が多いし、そもそも24時間換気でずっと換気する設備を稼働させています。

意図的にこんなにたくさん隙間を作っておいて、「うちは隙間がハガキ半分!」って、流石にどうかなあという感じです。

高気密・高断熱の家の落とし穴 邸別で数値は異なる

住宅会社が「うちはC値○○、UA値○○です!」と良くPRされてます。会社のHPなどでも公表値がありますよね。

これは、あくまで参考程度にしてください。

例えば、あるハウスメーカーが「UA値0.4」と公表していたとしましょう。この数字は、そのハウスメーカーが、とあるモデルプランで計算しただけの数字です。

ですが、UA値は建物の大きさ、プランの複雑さ、窓の大きさ等で全然違います。UA値の数字だけ良くしようともったら、立方体の単純な建物形状にし、窓を限りなく少なくするだけで簡単にUA値は良くなります。

でも、実際の家で窓がめちゃくちゃ小さいとか嫌ですよね?

なので、公表値はあくまで参考程度に留め、「あなたの家」がUA値いくつになるかを個別に計算してもらいましょう。

ほとんどの住宅会社で邸別のUA値計算ができますので、担当にお願いして計算してもらいましょう(っていうかこれができなかったら高断熱住宅を謳えない)。

高気密・高断熱の家の落とし穴 あくまで設計上の数値

あくまで設計上の数値 UA値

実は、UA値はあくまで理論値でしかなく、現場で測るものではありません。なので、完成した家が必ずしも計算上の数値が実現されているかどうかはわかりません。

で、断熱というのは、かなり施工の良し悪しに左右されるものなんです。

以下の表を見てみましょう。

グラスウールの施行

引用:「住宅の次世代省エネルギー基準と指針」

これは、グラスウールという国内で最も使用されている断熱材(黄色い毛布のような、あれです)において、施工状態と断熱性能の関係性を表す表です。

とても簡単にいうと、一見ちゃんと施工してそうだけど「少し詰め込みすぎた」「両端を押し込みすぎた」「少し隙間ができた」だけで断熱性能は半分以下にまで落ちる場合があります。

でも、施主はずっと工事現場に張り付いて監視しているわけではないですし、仮に監視できたとしても施工状態の良し悪しなんて一般人には判断できませんよね。

しかも、断熱材は壁の中ですから、完成したらどんな状態かなんてわかりません。

何度も言うようですが、数値が優れていること自体は良いことですが、数値の良し悪しだけを住宅の良し悪しの判断基準にするには、あまりにもギャンブルだと言うことです。

C値は現場測定ができる!

C値も、基本的にはあくまで公表値・理論値です。

がしかし、気密性能については実際に測定することができます!気密測定と言って、完成した家で気密性能がどれだけ実現できているかを検証することができるんですね。これであれば、本当の性能を確認することができます。

高気密を基準に住宅会社を決めるのであれば、この気密測定は必須といえるでしょう。

ただ、この気密測定は、現場立ち合いをすることをお勧めします。

気密測定をする際は、換気口や排水口などの穴は塞いで測定するのですが、サッシの隙間などは塞ぎません。が、実際に測定して目標の数値がでない場合、本来塞いではいけないサッシの隙間などをテープで塞ぎ、数値を改ざんする事例はたくさんあります。

気密測定する会社は住宅会社から依頼されて測定を行っていますから、いつも仕事をくれる住宅会社から多少の数値調整を頼まれては、なかなかNOとは言えません。仕事をもらえなくなってしまいますからね。

こんなことを防ぐためにも、気密測定には是非とも立ち合いましょう。

高気密・高断熱の家の落とし穴 あくまで新築時の性能

考えてみれば当たり前のことですが、C値もUA値も、全て「新築時」の数値でしかありません。国の省エネ基準もZEh基準も、全て新築時の性能を基準としています。

がしかし、家は建てた時がゴールではありませんよね?もちろん建てた時がスタートです。では、建てた後に気密性や断熱性がどうなっていくのか、二つの観点から見ていきましょう。

断熱材の劣化

冷静に考えて見た時、さすがに新築時の性能がそのまま数十年と維持し続けると考える人は少ないと思います。

中でも、国内で広く使われている「グラスウール」などの繊維系断熱材は、経年時のカビ、並びに性能の劣化が問題視されています。

「エスネル」ブログより

グラスウールのカビ。 : 社長☆ブログ「社長のつぶやき」 桶市ハウジング

桶市ハウジング・ブログより

上記の事例、通風紙も通気工法も施工されていたようですが、それでもダメな時はダメのようです。もちろん、全ての現場でこうなるとはいいませんが、壁の中に繊維状のものが何十年も押し込められていて、カビない方がおかしいような気もします。(カビないとされている無機系の繊維系断熱材でも同じ現象が起きています)

仮に写真のような状態は、断熱性能が格段に下がっているのはもちろんのこと、家の骨組みを腐らせる最大の要因となってもいます。

こうならないために様々な対策が取られていますが、最終的には人が作り出すもの。上の事例のように施工の良し悪しが全てを決めると言っても過言ではありません。

「うちはUA値○○だから快適!」なんて言われても、仮に新築時はその性能があったとしても、その後劣化していったらそれは意味のない数値と言わざるを得ませんよね。

だから、過剰な数字合戦はあまり意味がないなあと思うのです。

ちなみに、繊維系断熱材のようにここまでカビがひどくないにせよ、発泡プラスチック系の断熱材も同じように性能の劣化は起こります。

極一部ではありますが、性能の劣化がないことを謳った断熱材もあるようですので、住宅会社に聞いてみてはいかがでしょうか。

家そのものの劣化

上記のような状態にならないためにも、実は「気密性」がとっても大切だったりします。個人的には、気密性は住んでいる人の快適さを保護するものというよりは、住まいそのものを湿気で劣化させないためにあるものだと感じています。

「じゃあやっぱり気密性が高い方がいいじゃないか!」って言われそうですが、いや、そうなんですけど、じゃあその気密性も新築してからどうなっていくの?ってところが問題です。

どんなに気密性が高い住まいを新築したとしても、その後建物が歪んでいったら当たり前に隙間は増えます。

「もう20年も住んだから、窓とか建具のがたつきが出てきてね」なんて会話、聞いたことありませんか?これは、建物そのもの(骨組みや基礎、地盤など)が経年変化で歪んで来ることによって起こる現象です。

特に木造住宅は「木」という生き物を利用していますので、そりゃあ多少の歪みは出ます。「何十年経っても、寸分違わず歪みが一切生じない家」なんてのは流石に無理がありますよね。

(超一級の宮大工が有名な神社仏閣の補修をする際は、何十年と時間をかけて木材が経年変化することを見越し(利用し)、最終的にガッチリ骨組みが組み込まれるように計算して作るらしいです。)

先述の「ハガキ1枚分の隙間」の話を思い出して下さい。

新築時はハガキ1枚かハガキ半分かで目の色変えて競っていたのに、住まいがほんの少しでも歪めば、あっという間にハガキ分の隙間など出来てしまいます。(もちろん、基本的な住まいに問題がない範囲のわずかな歪みだとしても、です。)

「30年間、気密性保証!」なんていう住宅会社があればいいんですが、残念ながら私は見た事がありません。

くどいようですが、気密性も断熱性も数値が良いに越したことはないんですが、「過剰な」数値合戦はいかがなものかなあと思うのです。

高気密・高断熱の家 自然の恵みを取り入れる

気密性・断熱性が住まいの快適さを決める大きな要因であることに異論はありませんが、それだけで快適さが決まるわけではもちろんありません。

少し極端な例を挙げますが、例えば、UA値を良くしたければ窓をなくすのが一番手っ取り早いです。外壁よりも窓の方が圧倒的に熱を逃しますから。

でも、この家って快適ですか?窓があるから、夏は風が通って涼しく、冬は日が入って暖かくなるんですよね。

しかしながら、この自然の恵みによる快適さは、C値でもUA値でも評価されません。

実際に、高気密高断熱を謳いながら、西日の日射のことなど考えない窓の取り方をしていたり(高断熱がゆえに、窓からの日射で高温になった室内は地獄です)、風の通りを全く意識していない間取りなどを良く見かけます。

わずかな数値の良さを追い求める時間と労力があるのなら、数値はそこそこに、日照・採光・通風・日射などの検討を求めた方が全然良い家になると思っています。せっかく四季のある国に産まれたわけですから、それらに対抗するだけでなく、それらを「活かす」設計も考えましょう。

高気密・高断熱の家の落とし穴 まとめ

高気密・高断熱の家はとてもいいんですが、次の点は忘れないようにして、過剰なC値UA値の数値合戦に巻き込まれないようにしましょう。

  • そもそもC値は国の省エネ基準から除外されている項目
  • 住宅会社が公称値でどんな数値を謳っていても、邸毎に数値は変わる(邸別計算は必須)
  • その数値はあくまで「設計時」の理論値(気密測定は必須)
  • その数値はあくまで「新築時」の数値でしかない
  • 自然環境を上手く取り入れる方にもちゃんと力を入れよう

数値を追い求めるのはそこそこに、バランスの取れた住まいにしましょう。

それでは、あなたの建築計画が最高のものとなりますよう、心を込めて・・・