- それぞれのハウスメーカーって大体いくらくらいするの?
- 各社を坪単価で比較して決めよう!
- まずは、ネットで坪単価を調べてから、良さそうなところを見学だね
こう思う方は多いでしょう。
でもちょっと待ってください!!!
あなたは、「坪単価」の意味を本当にわかっていますか?
ネットに溢れる坪単価の比較表を、簡単に信じていませんか?
それを元にハウスメーカーの選別をしていませんか?
実は「坪単価」という言葉にはたくさんの罠が含まれているんです。ここでは、ハウスメーカー現役営業マンが、「坪単価」という言葉に潜んでいる罠を全てお伝えし、正しくハウスメーカーの検討をして頂けるようにアドバイスします!
そもそも「坪単価」って、なに?

『「坪単価」とは、「土地1坪(約3.3平方メートル)当たりの価格」のことです。また、家屋などを建てる際の、「1坪当たりの建築費」のことも坪単価といいます』(デジタル大辞泉より)
「土地1坪(約3.3平方メートル)当たりの価格。また、家屋などを建てる際の、1坪当たりの建築費(goo辞書より)
要は、建築においては「建築費÷坪数=坪単価」となります。
3000万円で50坪の家を建てたら、坪単価は3000万円÷50坪=坪単価60万円、となります。とても簡単ですね。
でも、ちょっと待ってください。
なんとなく使っているこの「建築費」って、何のことでしょう?どこまで費用が含まれているんでしょうか?「坪数」って、どこまでの坪数が含まれているんでしょうか?
ちゃんと理解している方は実はほとんどいません。
そして実は、ここに「坪単価」という言葉の罠があります。詳しく見ていきましょう。
坪単価でいう「建築費」って何のこと?

多くの場合、坪単価でいうところの「建築費」とは「建物本体の価格」のことを指します。なのでハウスメーカーによっては「建物本体価格÷坪数=坪単価」と解説するところも多いです。
さあ、ここです。
実はこの「建物本体の価格」というものは、めちゃくちゃアバウトな定義なんです。
骨組みとか内装とかキッチンとかは何となく含まれていそうですね。でも、水とかガスとか電気とかの整備費用は?庭とかカースペース造成の費用は?床暖房とか太陽光とかの大型設備は?いわゆるオプションの類は?
なにがどこまで含まれているかなんて、実は全然わかりませんよね?これが「坪単価」という言葉の罠の一つ目です。
大体のハウスメーカーや工務店の場合は、坪単価でいうところの建物本体費用には、土地の整備やライフラインの整備、オプション類の大型設備費用などは含まれません。
要は、坪単価×坪数=総建築費用ではないので注意が必要です。坪単価×坪数では家は建ちません!注意くださいね。
さらには、ハウスメーカーによって「建物本体費用」の解釈に違いがあります。少し極端な例ですが、ハウスメーカーの中には、例えば給湯器、窓の網戸、玄関ポーチなど、これら全て、建物本体費用に含まれない事などもあります。
そうすると、仮に建築総費用が全く同じA社とB社の場合でも、A社は坪単価60万円、B社は坪単価70万円なんてことがあり得るのです。
怖いですね。これくらい、坪単価というのは曖昧な表現なのです。無意味とは言いませんが、これを頼りにハウスメーカーを選別するのは危険が大きいと思います。
坪単価でいう「坪数」この表現にも罠が

坪単価は「建築費用÷坪数」と定義されています。
一般的には、この坪数は「延べ床面積」のことを指すことが多いです。とってもざっくりというと、延べ床面積とは床・壁・天井で囲まれた空間の面積のことです。なので、ベランダとか吹き抜けとか玄関ポーチとかはこの延べ床面積には含まれません。
ただ、もちろん、ベランダを作れば、吹き抜けを作れば、玄関ポーチを作ればその分お金はかかります。そのため、「延べ床面積」という言葉とは別に、「施工面積」という言葉があります。
施工面積とは、延べ床面積には含まれないんだけど、作ればお金がかかる建物の一部(先ほどのベランダや吹き抜けなど)の面積も含めた面積のことを言います。
ここが坪単価という言葉の罠の二つ目です。
実は、ハウスメーカーによっては、坪単価の計算をする上で、この「施工面積」を使用しているところがあります。
例えば、2000万円の本体価格、延べ床面積40坪、ベランダ面積5坪、吹き抜け面積4坪、玄関ポーチ1坪の家があったとしましょう。
延べ床面積を基準に坪単価を計算しているハウスメーカーでは
2000万円÷40坪(延べ床面積)=50万円(坪単価)となります。
しかし、施工面積を基準に坪単価を計算しているハウスメーカーでは
2000万円÷50坪(施工面積)=40万円(坪単価)ということになります。
どうでしょう。これだけで坪単価が10万円も変わります。恐ろしい話ですね。
やはり、「坪単価」というものはとてもとても曖昧なものだということです。
ネットでの坪単価情報の恐ろしさ

ここまでのように、「建築費」というものの範囲、「坪数」という概念、その両方がとても曖昧なもので、故に「坪単価」というものが非常に怖いものだということがわかりましたね。
そして、さらに怖いのがネットの情報です。
ネット上には各ハウスメーカーの坪単価情報がありますが、この情報は果たしてどこまでこの曖昧さを理解して書いているのでしょうか。
実際、こんな記事を見たことがあります。
A社の建築費はライフラインや外構工事まで全て含んだ総工事費用で計算し、一方B社はオプション抜きの最低限の建物本体価格で計算されている記事を見たことがあります。
めちゃくちゃアンフェアですよね。
私が見る限り、記事を書いている方もこのアンフェアさに気づいていないようでした。もちろんその記事を読んでいる一般読者の方は素人だからそんなこと気付きません。
「A社坪単価50万円(施工面積での計算)」「B社坪単価60万円(延べ床面積での計算・オプション含まず)」
とか全てに注釈があるのであればいいですが、そんなものは見たことがありません。
参考にしないでおきましょうとは申しません。ただ、これくらい、そもそも曖昧に曖昧を重ねに重ねた「坪単価」というものに、住まい選びの一役を担わせるのはかなりリスクがあるということは、是非とも覚えておいてください。
正しい建築費用の見極め方

というわけで、私が施主なら、ネットの坪単価比較表だけで判断することは絶対にしません。もちろん、「ここのメーカーは高目だね、ここは安目だね」くらいの材料にはすると思いますが、それだけでメーカー選別はやりません。
では、どうするか。
少し面倒ですが、個別にハウスメーカーの営業マンに聞いていくしかないです。でもこれが一番確実な方法です。とはいえ、全てのハウスメーカーに、間取りを作ってもらって正式な見積もりをとって、なんてことはやらなくても構いません。以下の手順で進めてみてください。
モデルハウス見学で気に入ったハウスメーカーを選別する
モデルハウスはたくさん見学しましょう。ただ、全てのメーカーのお金の話を聞く必要はありません。気に入ったところだけでいいです。だって、気に入っていないところはどうせ建てないから、お金の話聞いても意味ないです。「このメーカーいいな、建てたいな」と思ったところに絞るだけでかなりの時短になります。
モデルハウス見学の際に、総建築費用(概算)を計算してもらう
モデルハウスの見学の際に、営業マンにしっかりと総建築費用を聞きましょう。これは立ち話で軽くではなく、できればちゃんと商談コーナーで座って話を聞いた方がいいです。
間違っても、「おたく坪単価いくら?」なんて立ち話で聞いてはいけませんよ。あらゆる誤解の元となりますから。
建築にはいろんな費用がかかりますが、坪単価ではなくその全てを含んだ「総」建築費用を計算してもらえれば、坪単価に何が含まれているとかいないとか、関係ありません。
この際、建築費用は概算で構いません。ある程度経験のある営業マンなら、実際の価格からそんなに大ブレした概算費用になることはありません(もしそうだったらその営業マンは切りましょう)。ある程度お客さんからヒアリングしていけば、概算金額はその場で、何なら15分で計算できます。これを比べましょう。
もちろん、最終的にはちゃんと敷地調査もして、間取りも作って、正式な見積もりを出してもらうわけですが、計画初期段階にこれを複数社でやるのはめちゃくちゃ大変です。まずは概算で十分です。
また、概算とはいえ計算してもらう際の注意点を2つほど。
欲しいオプション類は全て含んだ計算にしてもらう
例えば、床暖房、食洗機、太陽光発電、蓄電池など欲しい設備機器、特に高価なものは必ず計算に入れてもらうようにしましょう。「かかるお金は全部教えてね」と営業マンに言ってください。あとで「これもかかるのか!」っていう事態が防げます。
そのハウスメーカー内での商品ランクを把握する
実は同じハウスメーカーの中でも、商品が複数あってもちろん性能も価格も違います。概算費用を出してもらった際、その価格はどのランクの商品なのかを必ず把握しましょう。
怖いのが、そしてよくあるのが、営業マンは高いと思われないように一番安い商品の価格で計算していた。でも、お客さんは展示場のように高ランクの商品の価格だと思っていた。この差がとても怖いです。契約前にわかればまだいいですが、契約後にわかるケースすらありますから、「この価格はどの程度の商品ランクですか?」「展示場くらいのランクだといくらくらいしますか?」などと聞いてください。後々の失敗を防ぎやすくなります。
ハウスメーカーの坪単価に関するまとめ
「坪単価」という表現はとっっっても曖昧なものなので、あくまで「参考」程度のしておきましょう。特にネットの情報は基準がバラバラすぎて参考にならないものがかなり多いです(もちろんそうではないものもありますよ!でもその正誤の判断が一般の方はわかりにくいです)。
【計画序盤にお金の比較をする流れ】
- ざっくりと「坪単価」で価格帯の把握をする
- 展示場で気に入るハウスメーカーを探す(複数社もちろんあり)
- ハウスメーカー見学の際に、その場で概算「総」建築費用を計算してもらう
これで、さらに候補のハウスメーカーを絞り込んでから、間取り作成や正式見積もりに進みましょう。
それでは、あなたの建築計画が最高のものとなりますよう、心を込めて・・・